たまに、ものすごく物量の多い日がある。
売場の向こうまで商品が積まれている。
これ、本当に今日中に終わるのか。
そんな空気が現場に流れる。
周りから、
「終わった……。」
みたいな声が聞こえてくることもある。
でも僕は、こういう日がわりと好きだ。
「盛り上がってきたぜー。」
くらいの気分になる。
普段の仕事は、基本的にルーティンだ。
同じ時間に出勤して、商品を処理して、売場を整えて、必要な仕事を片づける。
それはそれで嫌いではない。
でも、ときどき普段とは違う量がやってくる。
そういう時だけ、少しギアを上げる。
僕の中では、界王拳を使うような感覚だ。
普段から最大出力で働いているわけではない。
むしろ、普段は余力を残している。
ずっと全力で動いていたら、本当に必要な時に上げるギアがなくなる。
だから、必要な時だけ使う。
特に重たい荷物は、率先して持つ。
どうせ身体を動かすなら、仕事をしながら筋トレまでできる。
僕にとっては、なかなかお得な納品物だ。
一つ。
また一つ。
黙々と処理していく。
僕が先に動いていると、周りも少しずつ動き始める。
さっきまで、
「終わらない。」
と言っていた現場が、いつの間にかテキパキ回り始める。
山になっていた商品も、気づけばずいぶん小さくなっている。
そうして終わりが見えてきた頃に、定時がやってくる。
昔なら、
こんなに残っているんだから、最後までやった方がいい。
と思っていたかもしれない。
でも今は、一度周りを見る。
あと何人いるのか。
残りはどれくらいなのか。
僕が一人抜けても十分終わるのか。
そこで、
「あ、もう僕はいらないな。」
と思えば帰る。
後は任せた。
大量の商品が残っているから残業するわけではない。
僕が残る必要があるから残る。
そこは分けて考えている。
必要なら残る。
必要なら、もう一度ギアを上げる。
でも、必要がなければ帰る。
界王拳は、ずっと使うものではない。
使い終わったら、元へ戻る。
たぶん僕が欲しいのは、いつでも全力で走れる身体ではなく、
必要な時にだけ、ちゃんと力を出せる余力なのだと思う。
普段は普通に働く。
何かあれば、少し強くなる。
終われば、また普通に戻る。
今の僕には、そのくらいがちょうどいい。